BĘÃTFÓØT 『TOO CUTE』アナログリリースによせて

まさか今年の最重要案件であるMk.GeeとBeatfootが同日に入荷するとは思わなかった今週月曜。


おかげ様でMk.Geeは30分も経たないうちに完売、いち早く発送するべく翌日火曜は早朝からBeatfootを聴きマインドをレイヴ仕様にしてひたすら梱包作業。


いやー最高!!

 レコードは300枚プレス限定、日本語帯付きはAlffo限定僅か50枚です。素敵な帯デザインはしばしばお世話になっているDJのSEBO氏。



キャプションにも書きましたが、彼等が所属するレーベル〈Life And Death〉は2ndのヴァイナル化を予定してなかったそうで、ブレインのUdiがこっちに話を振ってくれたのがきっかけ。光栄、というか私がただただ欲しかったので双方で協力してプレスする運びとなりました(裏面にAlffo Recordsのロゴも入れてもらってます)。


Udiとはもう2年くらい定期的にやりとりしてますが、Prodigyのキースとフワちゃんをフュージョンしたアッパーなルックスとは裏腹にめっちゃくちゃクレバーで、セルフプロデュースが天才的に上手く、確固たる世界観も持っているうえに他者とのコミュニケーション力も達者。この人はビジネスマンになっても絶対成功すると思う。

少し作品について話すると、デビューアルバムのロック/パンクにレイヴ、エレクトロを混ぜつつ、他には無い圧倒的オリジナリティーがとっても衝撃的で、確かNMEのプレイリストで1曲聴いただけで速攻レコード探してました。恐らく私の強い気持ち強い愛が乗ったのでしょう、初入荷からこれまで当店だけでも100枚くらい売らせていただいた。1タイトルでの売り上げは間違いなく過去最高数。

そして次作となるこの『Too Cute』はロック/パンクのアティテュードはそのままに、よりハードな享楽性を搭載したレイヴ、エレクトロサウンドでもう頭からつま先までクライマックス怒りのデスロード状態。アルバムのスピード感とパワーは完全に前作越えでそれは本人も自覚してました。制作時期が被るかどうか、という点はさておき、イスラエル出身の彼らにとってこの「よりハードな享楽性」に振り切ったのは必然であったと思われる。


イスラエルがガザに侵攻した際、Udiは私にこんなメッセージをくれました。

「私はテルアビブの左派進歩的リベラルなアンダーグラウンド・クィア・シーンの一員であり、現政権に反対し、占領に反対し、パレスチナ人を支持している。パレスチナ解放運動の「名において」ハマスによるこれらの残虐行為はまったく恐ろしいものであり、最悪なのは、イスラエルとパレスチナの民間人がその代償を払っていることだ」

彼のこの誠実な言葉は、ポストモダン、リベラルを謳いながらもその実極左化し、世界を意識的(あるいは無意識的)に混乱に導く人種とは程遠く、また、好むと好まざるとに関わらずそれに加担する一連のセレブリティーとは一線を画している。


祖国が闇に落ち、また世界が混沌に足を踏み入れ、対話が成立しない状況下で、アーティスト、音楽家である彼らにとってできる事は何なのか。Beatfootにとってそれは、

 

「地に足をつけろ。地面を踏み鳴らせ」

 

という非暴力的扇動に他ならない。

それも生半可ではダメだ。最もフィジカルで、最もプリミティブで、最もフェティッシュなやり方でなければ。




そしてハードなアジテーションが続く中、休息を促すブリッジの様な名曲。



いつだったかUdiは、

「Big Thiefのファンなんだ。この曲The Moldy Peachesっぽいよね!」

 

と嬉しそうにメッセージをくれた。彼の音楽レンジの広さに驚くと同時に、この曲、MVからは、争いや殺し合いなんて存在しない世界が確かにそこに存在する様な気がして、"アート"が持ちうる可能性を痛烈に感じた。

この仕事をしているとほんと色々な国の、色々な思想を持った人のインタビューを読んで、考えさせられる事があるけど、アーティストとしてのスタンス、個の思想の在り方、という意味ではUdi、およびBeatfootに全面的に賛同する。なぜなら、私も、貴方も、誰もが、誰に指示されるでもなく、最もフィジカルで、最もプリミティブで、最もフェティッシュなやり方で地面を踏み鳴らせる世界を待ちわびている筈なのだから。


コメントは承認され次第、表示されます。