驚くべきスピード。2019年リリースのデビュー作『Dogrel』から早くも3作目、にして今作が世界的に最も高評価を得てるのではなかろうかFontaines D.C.のニューアルバム。今作を聴いて思ったが、今後デビュー作の様な性急なPost-Punkのスタイルを彼らに求めても無駄なのであろう。前作の『Hero's Death』なるタイトル然り、最強と言われながらも肥大した自らの角を支えきれず絶滅したアイリッシュ・エルクをスリーヴに配置した事もまた、彼らの激しい感情の変化、実存的不安を物語っている筈である。だが根本にある焦燥感がより深化したからこそ、彼等のハイペースな創作を突き動かしている筈だし、内省、客観性を実験的かつ挑戦的な試みに変換する才はArctic Monkeysと重なって仕方ない。あ・の・超傑作デビューアルバムの焼き増しを早々に否定し、混乱を受け入れ、表現者として地に足の着いたFontaines D.C.こそ今の時代に最も求められている「ロックバンド」なのかもしれない。
Tracklist:
A1. In ár gCroíthe go deo
A2. Big Shot
A3. How Cold Love Is
A4. Jackie Down The Line
A5. Bloomsday
B1. Roman Holiday
B2. The Couple Across The Way
B3. Skinty Fia
B4. I Love You
B5. Nabokov